風景とは、空や木や山などの自然物、建物から乗り物まで人工的な建造物、そしてそこにいる人間や動物まで指します。見渡して目に入るビジュアルが風景となります。風景のスケッチや写生をしたい方やイラストの背景を描きたい方に向けて、風景の描き方のポイントをまとめてみました。どんなツールで描くにしても通用する内容となっています。
風景を写実的に描く
構図を考える
どの風景のどの部分を切り取って描くかを考えます。まず、描きたい自然や建物、描きたい街並み、描きたい陽の光等、何をメインに美しく描きたいかを考え、狙いを定めて構図を決めます。見た景色をそのまま写実的に描くにしても、絵としての切り取り方には人それぞれの意思や個性が反映されますので、構図は重要です。
近景、中景、遠景をつくる
風景の奥行きに関してですが、およそ三段階に分けた構図にすると、空間を感じる立体的な絵になります。例えば、近景に大きく見える建物の一部を、中景に街並みを、遠景に山と空を配置する、といった感じです。自分の描きたいメインの物は、近景、中景、遠景の三段階くらいに分けたエリアのいずれかに描くのが理想です。(人物を登場させる場合、近景に人物を当てはめる、ということもアリです。)
絵の狙いを考える
同じ位置にある建物を模様のように繰り返し描くだけの絵よりも、手前に大きく映る建物があって奥へと続いていく絵の方が、スケール感があって印象が強いはずです。また、例えば…陽の光を浴びた広大で美しい畑を描きたい!と狙いを定めた場合、その要素だけを単調に描くよりも、近景に対立する要素として…例えば影った建物や木を入れることで、より一層、光を浴びる畑が目立つなどの引き立ての効果を生み出すこともできます。…一番描きたい物を魅せるための演出を考えて構図を決められたら素敵ですね。
遠近法(パース)を意識する
二次元の紙に、奥行きのある三次元の世界を表現するためには遠近法(パース)を意識しなければなりません。風景画におけるパースは、製図のように厳密ではなくても大丈夫です。風景画は、パースが正確なことに越したことはありませんが、それ以上に、感覚的な雰囲気が正しいかとか情感が伝わってくるかといったことの方が(美術的には)重要です。←スケッチは特にそうです。
雲にもパースがかかっている
建物や木など、単体の物だけでなく、広大な空に散らばる雲にも遠近があることを意識します。基本的に、遠くにある建物ほど小さく見えていくように、遠くにある雲ほど小さく見えていきます。自分の頭上から地平線まで…空や雲は風景の中で、最も長い距離感を出さなければならない要素です。
空気遠近法を意識する
遠景の景色は、地平線に近づくほど空の色に染まっていきます。写真の木々を見てください。手前の木々は鮮やかな黄緑色ですが、遠くに行くにしたがって、木々は徐々に水色みを帯びていくことがわかります。自分のいる位置に近い近景の物体は、空の色に影響されず、個有色(物体のもっている本来の色)ではっきり見えます。遠景になるにつれて、建物や自然物が空の色に染まっていく度合いは強まります。遠景を描く際は、必ず空の色を意識した色で塗って自然な感じを出しましょう。
近景、中景、遠景を描き分ける
遠景は、中景や近景より細部が見えにくくなっていくものなので、初心者の方は、近景より手を抜いて描いたり、ぼかしてさらっと描いてしまうということも多いと思います。が、ここで注意です!遠景こそ、最も情報量が圧縮されていて奥行きを感じさせる部分なので、手数は少なくてもしっかりと描写しなくてはなりません。近景にある対象物はもちろん密に描く必要がありますが、中景も遠景も、ある程度描写する必要があります。そして、空気遠近を意識した着彩をすることで距離感を出すことが大事です。
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光と陰影を捉える
静物デッサンと同じように、光がどこから当たっていて、どこに影が落ちているかということを意識して風景を描きます。朝、昼、夜の時間、晴、曇り、雨などの天候、そして春、夏、秋、冬といった季節によって、光や陰影の見え方は異なります。光と陰影の向きや色合いの特徴をつかんで、生き生きとした美しい絵を描いてみてください。
クーピーペンシルと色鉛筆で描いてみました。
パンパステルで描いてみました。