立体感のある絵を描くときに必要なパースの概念についてご説明します。パースとは遠近法のことを指します。パースといえば、建築の製図を想像することが多いと思いますが、建物だけでなく、奥行きをもった全ての物に共通する概念です。立体物を平面に落とし込む際の手法を透視図法といいます。
▼目次
一点透視図法とは
立体の辺を直線で伸ばしていくと、一つの点で交わります。この点を消失点といいます。1つの消失点で立体を表現する手法を一点透視図法といいます。また、消失点の高さが、この対象物を見ている人の目線の高さ(対象物を映すカメラの位置)となります。
●左の図は、室内の一室と考えて下さい。…真正面から見ているので、内側の側面が全部見えます。
●右の図は、四角い箱、もしくはビルと考えて下さい。…目線の位置が高いので、上面が見えます。
二点透視図法とは
立体の辺を直線で伸ばしていくと、2つの点で交わります。2つの消失点で立体を表現する手法を二点透視図法といいます。二方向の奥行きが存在し、縦方向の線は垂直です。2つの消失点は、見ている人の目線の高さに位置します。
図は、2つの消失点の位置が近くてパースがきつく感じられますが、消失点の位置をもっと遠くに設定すれば、より自然な感じになります。画用紙に絵を描く時、意図する絵を描こうとすると消失点が用紙に入りきらないことがあると思います。その場合は別の用紙をつぎ足し、そこに消失点を定めるようにしましょう。
三点透視図法とは
立体の辺を直線で伸ばしていくと、3つの点で交わります。3つの消失点で立体を表現する手法を三点透視図法といいます。三方向に奥行きが存在します。2つの消失点は、見ている人の目線の高さに位置します。
巨大な建造物を描くときに適した表現方法です。きつめにパースをとると現実離れした見え方になりますが、ダイナミックな印象を与えることができます。建物だけでなく、キャラクターなどの人物にもパースを当てはめて描くと力強い絵になります。一方、静物画などで小さいモチーフを描く場合、縦方向に急なパースはかかって見えないので三点透視法はあまり使わないです。
アオリ(煽り)とふかん(俯瞰)
図のように、縦に細長い直方体もしくは円柱があることを想像してみてください。目の高さに位置するところで立体物を切った場合、断面は見えません。目の位置より上に断面がある場合は立体物の底の断面が見え、目の位置より下に断面がある場合は上の断面が見えます。
アオリ(煽り)
対象物を下から見上げた状態。物の底面が見えます。高いビルを下から眺めた状態を想像して下さい。あるいは、頭像を下から見上げた状態を想像してください。対象物に威圧感を出したいときに使うと効果的です。
ふかん(俯瞰)
対象物を上から見下げた状態。物の上面が見えます。鳥瞰図やパノラマ図が当てはまります。高台に立って、建物を上から眺めた状態を想像してください。あるいは、アルミ缶を上から眺めた状態を想像してください。静物画で小さいモチーフを描く場合は、だいたい上から見下げた状態で描くことが多いと思います。
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断面の見え方についての注意事項です。図を見て、アルミ缶を上から眺めた状態を想像してみてください。アルミ缶を目の位置より下に置いた場合、缶の底面が、缶の上面の面積より大きく見えることがわかります。断面が同じ面積では見えないということを意識して下さい。デッサンをする際、「どんな物にも全てパースがかかっている」ということを認識して描くことが大切です。
透視図法を使って絵を描く
一点透視図法で描いた絵です。青いラインがカメラの位置です。道の奥に、消失点が1つだけ存在します。
三点透視図法で描いた絵です。左右横方向そして縦方向にパースがかかっており、それぞれ辺の延長線上に消失点が3つがあります。
3つの消失点の位置は、↑図のようになっています。この室内を見ている人の目の高さ(カメラの位置)は、画像のかなり上の方です。よって、天井付近から見下げた室内風景となっています。…ちなみに、オレンジ色のラインに消失点がない場合(縦方向にパースがかかっていない場合)は、二点透視図法となります。
パースって「製図」というような堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、パースをマスターすれば、説得力のある絵が生み出せます。また、自分の好きな世界を自由自在に表現できるようになるので、絵を描くのがとても楽しくなるはずです!
鉛筆で一から背景画を描いて着彩する描き方はこちら↓
●イラスト・絵画「竜宮」を描きました。
●空想の風景を描く
●印象的な風景を描く