石膏デッサンは、白い石膏像を見た通りの陰影で白黒で描けばよいのですが、静物デッサンは、様々なモチーフの色や質感や反射の情報を描き分けなくてはなりません。今回は、鉛筆で描く静物デッサンのポイントを説明していきます。
静物の質感を、モノトーンの鉛筆だけでリアルに描く
陶器(ティーカップ)
白い陶器です。反射率が高い素材です。周囲に置いてあるモチーフや床が反射して映り込んでいる部分をしっかり描くとそれらしくなります。カップの縁や持ち手などの形の変わり目部分に、暗い色と真っ白をぶつけると、キラッと輝いた感じが出てそれらしい質感になります。
鉛筆の使い分け
Hより硬い鉛筆を使い分けながら明暗を描きます。画用紙にピタッと押し付けるようにして描くと陶器の硬さが出ます。陰の部分だけ、最初にBくらいの鉛筆で塗って擦っておくとよいです。そうすると、柔らかい鉛筆のボサボサした感じは残しません。
果実(りんご)
りんごの皮はつるっとしていて少し光っているので、上部に明るさを入れるのがポイントです。多少反射もするので、周囲に存在する物体の映り込みもうっすら描きます。赤は明度が低いので全体的にしっかりと色をつけますが、黄色や緑色に部分的に変化している微妙な色のニュアンスも自然物らしく描けるといいです。斑点や筋などの模様も、「りんご」らしさを出すポイントなので描きます。
鉛筆の使い分け
つるっと光っている部分は、硬い鉛筆で描きます。全体的にはBくらいの鉛筆で質感を出すといいと思います。「りんご」の表面はざらついていないので、柔らか過ぎる鉛筆で描かない方がいいです。つるっと引き締まっていて、でも硬すぎず柔らか過ぎず、しかもランダムな模様があるのが「りんご」です。硬い鉛筆と柔らかい鉛筆を駆使して描きます。
布(ぬいぐるみ)
もふっとした柔らかさを表現するのがポイントです。服の部分は皺などのたるみの表現がポイントで、ぬいぐるみの体の部分は縫い目とわずかな皺がポイントとなります。ボタンなど、違う質感の物をしっかり描き分けると、対比効果で布の質感も際立って見えてきます。
鉛筆の使い分け
タオルのような柔らかさのあるぬいぐるみの表面は基本的に、B~3Bの柔らかい鉛筆で描きます。光が最も当たっている明るい部分だけ、Hの鉛筆で毛並みを描くのがよいです。普通の布も、基本的にB前後で描くのがよいと思います。
↓ステッドラーの鉛筆セット。4H~6Bまでの鉛筆12本入り。
↓ハイユニの鉛筆セット。10H~10Bまでの鉛筆22本入り。
植物(花)
立体を意識しながらも、細かい形の変化を捉えて描いていきます。ハッチングを生かした細かいタッチで立体感を表現していくとよいです。
鉛筆の使い分け
Hくらいの鉛筆で繊細にかっちりと描いていきます。陰のたまる部分を明瞭に描くのがポイントです。
プラスチック(ペットボトル容器)
周囲の物体を反射するので、映り込みをしっかりと描きます。電球等の光の映り込みは重要で、キラッとしたハイライトを入れます。一方、暗い部分にはシャープな黒をしっかりと入れて引き締めます。ペットボトル容器は口の部分や底の部分など、形の変わり目に当たる部分は特にしっかりと描きます。物体が透明な分、キャップやラベルや床の影をしっかり描くことで、ペットボトル容器全体の存在感を出します。
鉛筆の使い分け
色の濃い液体が入っている場合は柔らかい鉛筆でしっかり塗りますが、ペットボトルはつるっとした硬い素材なので、ボサボサしたタッチにしないのがよいです。基本的に硬い鉛筆で画用紙にピッタっと色を付着させるようにして描きます。
ガラス(コップ、浮き玉)
周囲の物体を反射するので、映り込みをしっかりと描きます。電球等の光の映り込みは重要で、キラッとしたハイライトを入れます。暗い色と真っ白な色をぶつけると、鋭く輝いた感じが出てガラスらしい質感になります。コップは形の変わり目である縁や底をしっかり描きます。影にも、輝きと透明感を描写します。
鉛筆の使い分け
基本的に硬い鉛筆で引き締めながら、つるっとした質感を表現します。ガラスの色が濃い場合は柔らかい鉛筆でしっかり塗りますが、ボサボサしたタッチにしないのがよいです。鉛筆を立たせてシャープに塗るのがよいです。
石膏像
普通の静物と比べると…石膏像というのは、色がないし、特徴的な質感もないし、反射もないしで、非常に描きやすいモチーフなんですね。それだけに、複雑な形状の像ばかりが存在して。。基本的な形状や陰影を捉える練習として使うには、最適のモチーフといえます。
↓デッサン上達の近道は、達人のデッサンの制作過程をしっかりと見ることです。
●デッサンを学ぶ
●鉛筆デッサンに必要な道具
●デッサンや着彩に必要な備品
●鉛筆のトーンとタッチ
●初心者のデッサンのすすめ方
●立方体をデッサンする
●円柱をデッサンする
●球体をデッサンする